軽口雑話 第18話 勘 違 い   
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≫ 勘違い(第18話)

 ”吉川さん靴下なんかはいちゃって、”ある時、国立で通っていたスポーツクラブのロッカールームで宇佐見さんに言われました。そのころ水泳を日課にしていて毎日2000mくらいは泳いでいました。その日は、調子よく2500m近く泳ぎました。くたくたになってシャワーを浴び着替えを始めました。いつもはパンツを履きズボンを履き、シャツを着て靴下を履きます。この時はどういう訳かロッカーの一番上に最後に脱いだ靴下が乗っていました。無意識に上の靴下を取って履き始めました。隣でちらっと見ていた宇佐見さんが”吉川さん靴下なんかはいちゃって、靴下なんか履くの、僕にはわかんないね!”と言いました。私は、まだパンツをはかずに靴下を履いただけでした。”なんか鉄腕アトムみたい。この窓から飛び出しそうジャン!”靴下だけ履いてぶらぶらさせているのを見て揶揄されたと思い、恥ずかしいのと相まって頭にカッ血が上りました。”靴下先に履いちゃ悪い!”と言いながらパンツを急いではきました。彼は変な顔をしています。やっぱりパンツを先に履くのが常道だよなと心の中で思いました。ムスッとして急いで洋服を着ていると、彼が部屋を出るところでした。ドアを開けながら彼は”僕なんか靴下履いたことなんかないもんね。よくそんなうっとうしい物履いていられるね。じゃあね!”と言って帰って行きました。ちょっとの間、なんか変だなと思いました。私は裸から靴下を先に履く行為を揶揄されたと思ったのです。そうではなく、彼の常識では靴下なんか履く奴は変な奴だったのです。勝手に思い違いをして腹を立てただけでした。
 数日後、結構笑い話になると思って、プールで一緒に泳いでいる笑い上戸の奥田さんにこの話をしました。さんざん笑ったあと”ところでその話どこがおもしろいの?””えっ!!!”
 時々そのことを思い出すと靴下だけ履いた自分の裸を思い浮かべ一人苦笑してしまいます。
   なんでこんな事を書いたかと言うとマレーシアに来てちょっちゅう腹を立てる事が起こります。後で考えると、何かがすれ違っていて、上に書いた事と同じ事が起こっています。相手は普通の事をしているのに、こちらだけが勝手に自分の常識に入っていないと腹を立ててしまいます。常識がすれ違っているのです。かっかするのはちょっと時間をおいてよく確かめてからでも遅くありません。それでもマレーシアでは日本人との常識のすれ違いはちょっちゅう有ります。いやありすぎます。




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