軽口雑話 第29話 マレーシアの工業事情   
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≫ マレーシアの工業事情(第29話)

 最近お手伝いをしている会社であちこちの日本企業を回る事が多くなりました。だんだん分かって来たのは、日本の企業はこちらの駐在員を減らしているように見えます。多分工場を中国にシフトしての事だと思います。
 駐在員が所定の任務を終わって帰国すると次の補充人員を置かず減らしたままにする企業が多くなりました。結果的に少しずつ縮小させているようです。  こちらのナンバーワン日本企業と言えば、松下電器ですが、こちらも工場を縮小しているという話が聞こえて来ます。あちらの部署が引き上げた。とか、こちらの部署も引き上げるらしいとか、いろいろと聞こえて来ます。
 中国へシフトして行く企業は良いとしても、ダウンしてしまった企業もかなり有ります。DVDの普及でビデオ関係の企業は殆どダウンしました。うまく他業種へ乗り換えられた処と、そのまま沈んでしまった企業に二分されますが生き残れなかった企業の方が多い様に思います。廃工場にする処が増えています。
 キャノンなどは絶好調のようで、あちこちの下請け企業が仕事をしています。
 自動車産業は概して好調ですがですが、プロトン系に噛んでいるところは、不調です。ご存じのようにプロトンはマレーシアの2つの国民車の一方の雄で三菱との合弁で始めた企業です。三菱とは仲違いをして今はヨーロッパのメーカーと組んでいます。マハティール氏の旗の下、鼻息は荒かったのですが、政府の保護を頼りにしすぎたせいか、開発力がないせいか、シェアーは下降線をたどっています。
 もう一方の国民車プルドアは、ダイハツが50%以上をもつ会社です。プロトンがシェアーを下げた分プルドアはシェアーを上げています。
 プルドア車は日本で言えば軽が中心です。660ccもありますが、こちらでは、800ccを乗せたものに人気があります。概してマレー人に好評です。
 自動車産業で仕事をしている日本企業はマレーシアがFTA交渉で、将来(5年後から段階的に緩和)自由化しても人口が2000万人しかありませんから、あまり期待していません。皆危機感をもっています。マレーシアの日本企業は交渉を見守りながらタイへ目線が行っています。タイの人口は6000万人でマレーシアの3倍ありますしFTA交渉ではタイの方が柔軟です。
 その他の自動車市場は、日本車、韓国車、ドイツ車、最近は中国車も食い込んでパイが小さいせいもあって激戦場です。今のところマレーシア政府は自動車の保護政策をとっています。2000cc以上の車は関税が100%、200%と掛かるので、走ってはいますが大衆購買層が買える値段ではありません。2000cc以下の車が殆どです。豊富な自動車市場と言うわけでは有りません。
 自動車鎖国の弊害は、中古車値段の下がらないことです。6〜7年落ちのプロトン1300CCが100万円もします。
 日本で、私は組み込み用の基板コンピューター開発をやっていました。ここではコンピューターというとデスクトップかノート型のPCのことで組み込み用コンピューターの存在すら知らない人が殆どです。日本からの製作品の依頼は量産品ばかりで、殆どがシーケンサーで物を動かす様に指示されていますから必要が無いのかもしれません。
 それでもこれからはマレーシアでも隙間産業をやらないと生き残れない時代がくるかもしれません。そうなると組み込み基板コンピューターくらいは操れないと付加価値の高い物は作れないのではないでしょうか。




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